[ セールス部門との連携強化 ]
物流現場の課題をセールス部門が「自分ごと」と捉え、全国での勉強会を通じて物流への理解を深め、付帯作業削減などの具体的な改善行動を促している。これにより、契約外の付帯作業について、改善要請の解消率が大幅に向上した。
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発荷主
江崎グリコは「すこやかな毎日、ゆたかな人生」を存在意義(パーパス)に掲げ、主に「ポッキー」や「ビスコ」を扱う栄養菓子事業、「アーモンド効果」を扱う健康・食品事業、乳業事業、食品原料事業などを展開している。法人向けのサービス「オフィスグリコ」や「バトンドール」など新たなチャネルも開拓している。海外ではアジアを中心に菓子やアイスクリーム、粉ミルクなどを展開している。
取組の背景
江崎グリコは、2024年問題への対応に加えて、物流事業者からの改善要望や人手不足の深刻化を背景として、ドライバーの労働時間の削減に取り組んでいる。特に菓子や冷菓では、繁忙期と閑散期の物量変動が大きく、トラックの手配が困難である同社固有の課題も抱えている。パーパスに掲げる「すこやかな毎日、ゆたかな人生」を実現するためには、物流を持続可能な形で維持する必要があり、全社を挙げた多角的な施策を推進している。
取組のポイント
物流現場の課題をセールス部門が「自分ごと」と捉え、全国での勉強会を通じて物流への理解を深め、付帯作業削減などの具体的な改善行動を促している。これにより、契約外の付帯作業について、改善要請の解消率が大幅に向上した。
パレット化の推進(工場出荷パレット率97~98%達成)による積み下ろし時間の短縮、工場出荷時の予約システム導入による荷待ち時間の削減など、物流プロセスの効率化を徹底している。
モーダルシフトやダブル連結トラックの導入を推進するほか、2027-2028年の無人化を目指す自動運転(レベル4)の実証実験にも積極的に参画し、ドライバーの休息時間を確保し、効率化を図る。
製造・営業部門出身者がロジスティクス部門で活躍するなど、部門間の人材交流を活発化。さらに、他社との共同輸送の働きかけや業界団体を通じた情報交換などにより、業界全体での協調・共同領域の拡大をリードしている。
セールスとロジスティクス部門の連携を強化
江崎グリコが「2024年問題」に代表される物流課題に対し、全社を挙げて取り組む中で、特に注力しているのがセールス部門とロジスティクス部門の連携強化だ。この連携は、単なる情報共有にとどまらず、物流現場の課題をセールス部門が「自分ごと」として捉え、具体的な行動変容を促すことで、持続可能な物流体制の構築に大きく貢献している。
これまで、物流部門は物流事業者からの改善要望に対し、自部門内で解決策を模索する傾向にあった。しかし、物流の現場が抱える問題は、輸送手段の効率化や荷待ち時間の削減といったロジスティクス部門単独で解決できる範囲を超え、商品の生産計画や納品条件、さらには営業戦略そのものに起因するケースも少なくなかった。例えば、菓子や冷菓といった繁閑の差が大きい商品は、年間を通じたトラックを手配することが難しく、特定の時期に物流負荷が集中するといった課題は、セールス部門の販売計画と密接に関わっていた。
こうした背景から、江崎グリコはロジスティクス部門の担当者がセールス部門の部門長会議に参加し、物流の現状と課題、そしてこれまでの取り組みと成果を共有する機会を設けてきた。さらに、2024年の秋からは、全国各地のセールス現場を回る形で定期的な勉強会を開始。この勉強会では、ロジスティクス部門の担当者が直接、現場のセールス担当者に対し、物流の仕組みや契約内容、ドライバーの労働実態などを説明。特に、システムトラブルにより実際に商品が運べない状況を経験したことで、セールス部門の物流への意識は飛躍的に高まったという。さらに、セールス担当者がチルド商品の集配を行う物流センターの冷蔵倉庫を見学し、物流現場の実態を知る機会も設けている。
ロジスティクス部門が、全国各地のセールス現場を回り定期的な勉強会を実施。物流現場の課題を共有し、具体的な行動変容を促している。
セールス担当者のチルド商品の集配を行う物流センターの冷蔵見学会も実施し、物流現場への理解を深めている。
この連携強化によって、まず契約外の付帯作業に関する改善要請の解消率が大幅に向上した。2025年年初には40件の改善要請があったが、6月までにこのうち27件が解消されており、これは昨年までの改善ペースを大きく上回るものだという。セールス部門が物流現場の課題を理解し、実際に顧客との交渉を主導するようになったことで、現場レベルでの付帯作業の削減が加速している。また、単なる問題解決にとどまらず、これまでチルドでしか運べなかった商品を、セールス部門が「冷やさないで運べる方法はないか」と物流部門に提案し、その実現に向けた物流システムの開発につながった事例も生まれている。これは、セールス部門が売上拡大という視点だけでなく、物流効率化という視点も持ち合わせるようになり、部門間の壁を越えた協業が、イノベーションを促しているという。今後は、この部門連携をさらに深め、自動運転やラウンドユースといった先進的な取り組みも推進することで、ドライバーの労働環境改善と物流全体の効率化を両立させ、持続可能なサプライチェーンの構築を目指す。
取組担当者の声
江崎グリコロジスティクス 部長竹下 徹さん
持続可能な物流を実現するためには、ドライバーの労働環境を改善することが喫緊の課題となっています。特にセールス部門との連携を強化した結果、納品条件の改善要望の達成率が50%から100%近くまで向上しました。今後は、セールスメンバーへの勉強会の実施率向上(現状10%未満)や、菓子・アイス・チルドなど部門間での活動の統一を進めることで、会社全体としての意識改革と物流効率化を推進していきたいと考えています。
セールス担当者の声
江崎グリコ四国 グループリーダー平岡 正臣さん
物流勉強会を通じて、セールス部門の物流課題への認識が深まりました。これまで具体的なコスト意識がありませんでしたが、今回の勉強会で数字を理解できたことで、営業現場での商談設定などにも、物流の現状認識が役立つと感じています。また、2024年問題などの社会課題については認識していたものの、具体的な現場課題としてはドライバーの「待ち時間や待機時間」が存在することを実感しました。今後は、自社だけでなく取引先の理解も得ながら、「トータルで社会に貢献する」という姿勢で物流改革に取り組んでいきたいと考えています。
(2026年3月作成)