[ 旅行会社との連携強化 ]
改正改善基準告示を旅行会社に周知するため、業界団体を通じた説明会や個別訪問を2023年後半から約半年間実施するとともに、神奈中観光内でも改善基準告示の遵守を徹底するため、行程作成段階での厳格なダブルチェック体制を構築した。
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バス事業者
神奈中観光は、1949年2月に前身である神奈川県観光株式会社が創業した貸切バス事業者。その後、小田急グループおよび神奈中グループの一員として、75年以上にわたり貸切バス事業を展開してきた。現在では、神奈川県と東京都を事業区域とし、団体旅行や企業の送迎など、多様なニーズに応じたバスを運行している。
取組の背景
今回の改正の前から、乗務員の拘束時間や休息時間のルールが改善基準告示に定められていたが、観光バス業界では、バスを利用する側である旅行会社や顧客にその重要性の認識が十分に浸透しておらず、その結果、乗務員に負担がかかることもあった。
取組のポイント
改正改善基準告示を旅行会社に周知するため、業界団体を通じた説明会や個別訪問を2023年後半から約半年間実施するとともに、神奈中観光内でも改善基準告示の遵守を徹底するため、行程作成段階での厳格なダブルチェック体制を構築した。
労働時間の短縮後も乗務員の賃金水準を維持すること(運賃見直し)や、運行管理者が乗務員の勤務状況を詳細に確認し、より厳密な時間管理を行うことで、乗務員に負担のかからない勤務割を作成して乗務員の負担軽減を図ることにより、魅力ある労働環境の構築を目指す。
改正改善基準告示への対応、旅行会社との連携が最重要課題に
神奈中観光が最も力を入れた取組は、旅行会社への丁寧な説明と理解促進だった。同社は顧客の約8割を旅行会社から受けるため、直接顧客に説明する機会が限られており、旅行会社への説明が不可欠だった。この状況は、今回の改正前から、乗務員の拘束時間や翌日までの休息時間のルールが改善基準告示に定められていたにもかかわらず、業界全体では、旅行会社や顧客にその重要性の認識が十分に浸透していなかったため、改正後のルールへの対応が求められた。
そのため、まず業界団体を通じた説明会の場を活用することとし、大手旅行会社も参加するバス会に労働基準監督署の担当者を招き、改正改善基準告示について説明してもらうことで、業界全体での共通認識形成を図った。また、旅行会社に直接出向いたり、仕入部門などとリモート会議を行ったりして、改正改善基準告示の内容を地道に発信した。特に大手旅行会社の場合、本社の仕入部門から全国の営業担当、さらに地域担当の仕入担当者へと情報を伝えるため、粘り強い働きかけが必要であった。
さらに、改正改善基準告示の解説資料を基に、旅行会社に関係するルールの部分を抜粋し、そのルールに基づいたモデルコースを作成。乗務員に必要となる休憩時間(4時間連続運転で30分、15分休憩など)について具体的な文言を提示するなどしたことで、旅行会社は具体的なイメージを持って新しいルールに対応できるようになり、行程作成の段階から改善基準告示を遵守した計画を立てやすくなったという。営業責任者レベルでの連携も図られ、バス会社側と旅行会社側の営業責任者同士が直接会合を持ち、決定事項をそれぞれの組織内に展開する形で進められた。これは、トップダウンでの情報伝達を確実にするための重要な戦略であった。
旅行の行程を作成する際には、乗務員の拘束時間や休息時間のルール遵守が絶対条件。観光バス業界では、これまでこうしたルールへの理解が利用者に浸透しづらい状況にあったが、関係者の地道な取組によって環境が整いつつある。
これらの取組により、約半年間で業界内での周知が進み、大きな混乱なく運用されるようになった。当初は拘束時間をオーバーした見積もり依頼もあったが、現在は調整に時間がかかることはなくなっているという。
今後の課題としては、労働時間短縮後における乗務員の賃金水準を維持・向上し、こうした処遇を前提としたバス業界における働き方についての魅力の発信が挙げられる。
取組責任者
専務取締役今井 恵一さん
人の命を預かる運行において、乗務員の運転管理は年々厳格化していると感じています。安全運行のためには時間制限や適切な休息が必要であり、乗務員の負担軽減を考慮すると労働時間が短縮されることは良いことだと考えています。そのためには、社内だけではなく、旅行会社との協力関係の構築・維持がこれまで以上に重要であり、この実現に向けて地道な取組を継続していきたいです。
総務担当者の声
総務課長山﨑 誠さん
乗務員の労働時間や拘束時間を把握し、管理職間で共有することで、特定の乗務員に負荷がかからないように働ける環境を整えることが重要だと考えています。お客様へ「安心・安全・快適で楽しさを感じていただけるバス」を目指すとともに従業員およびその家族の生活を守るためにも、引き続き、改正後の改善基準告示を遵守した運行管理を徹底してまいります。
(2026年3月作成)